便秘や浮腫の原因が実は甲状腺機能低下症によるものだったということを一般内科ではよく目にするように、甲状腺ホルモンの異常は様々な体調不良を起こします。また、甲状腺に関連する病気の頻度は意外にも高く、疫学的調査では10人に1人は甲状腺疾患をもっていると言われています。
甲状腺疾患は、①甲状腺腫瘍や単純性甲状腺腫などのように腫瘍やサイズが問題である場合、
②甲状腺機能に異常がある場合の2つに大きく分けられます。
①腫瘍やサイズの異常
- 良性腫瘍:単純性甲状腺腫、腺腫様甲状腺腫、腺腫、のう胞など
- 悪性腫瘍:乳頭癌、濾胞癌、未分化癌、悪性リンパ腫など
触診、エコーを行い、必要に応じて細胞診、追加画像検査を加えて診断します。
②甲状腺機能異常
- 甲状腺機能低下症:橋本病、医原性、萎縮性甲状腺炎など
- 甲状腺機能亢進症:バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎など
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは、甲状腺から分泌されるホルモンで、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があります。これらのホルモンは、体内の代謝を調整する役割を持ち、体温の維持、心拍数の調整、エネルギー消費の促進などに関与します。甲状腺ホルモンの分泌は、脳からのホルモンでコントロールされ、必要に応じて増減します。分泌量が過剰な場合は甲状腺機能亢進症、不足する場合は甲状腺機能低下症を引き起こし、体調に大きな影響を与えます。
TSH、TRH
TSH(甲状腺刺激ホルモン)は、下垂体から分泌され、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促進するホルモンです。視床下部から分泌されるTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)によってTSHの分泌が調整されます。TSHのレベルは甲状腺ホルモンの分泌量と密接に関連しており、甲状腺ホルモンが不足するとTSHの分泌が増加し、過剰になると分泌が抑制されます。TSHの値は、甲状腺の機能を診断する重要な指標として、甲状腺機能亢進症や低下症の診断に用いられます。

症状
甲状腺機能異常の時に起こりうる症状例は以下の通りです。各専門科ごとに症状を分けて記載してみました。
甲状腺ホルモンの血液検査は健診・検診では通常行われません。また、下記の症状を訴えて医療機関を受診した際にも、すぐには検査しないことが多いようです。特殊な検査項目なので時間がかかりますが、血液検査で調べられることなので気になる際は一度検査してみてはいかがでしょうか。
| 低下の時 | 亢進の時 | |
| (一般内科) | 体重増加 | 体重減少、発汗、微熱、口渇 |
| (循環器内科) | 浮腫、心不全、徐脈 | 動悸、息切れ、心不全 |
| (消化器内科) | 便秘、食思不振、腸閉塞 | 下痢、食思不振 |
| (神経内科) | 筋肉痛、筋力低下 | 手のふるえ |
| (精神科) | うつ、認知症 | 不安、多弁、不眠 |
| (整形外科) | 関節痛、筋肉痛 | |
| (皮膚科) | 脱毛、皮膚の乾燥 | かゆみ |
| (耳鼻科) | 嗄声(かすれ声)、めまい | |
| (産婦人科) | 月経異常 | 月経異常 |
| (眼科) | 眼の突出、顔貌変化 | |
| (救急科) | 昏睡 | |


コメント